理事長メッセージ

 中山智祥前理事長の任期満了に伴い、令和7年4月より第11期日本遺伝子診療学会理事長として責務を引き継ぐことになりました仁井見 英樹と申します。任期となる4年間の責任の重さを痛感しつつも、本学会活動を更に盛り上げるために力の限り旗を振り続けようとのポジティブな気持ちでいます。皆様にはこの場をお借りしてご挨拶申し上げます。

 日本遺伝子診療学会は日本人類遺伝学会、日本遺伝カウンセリング学会とともに遺伝医学関連三学会としての一翼を担っています。本学会の目的とは、「遺伝子関連技術の臨床的応用に関する研究の推進と向上、および良質な遺伝子診療の推進と発展・普及をはかること」とされています(会則第3条)。そのため、遺伝子関連検査や遺伝子診療に関わる課題の明確化とその解決へのコンセンサスを作成すると共に、アカデミアや関連企業には学術情報提供活動を行い、被検者(患者・市民など)には正しい理解を促進する活動を行っています。また、遺伝子関連検査の実施・運用に関しては、適切な精度管理手法による標準化を推進することで、良質な遺伝子診療が推進されるように努めています。2023年6月の「ゲノム医療推進法」の成立をはじめとして、ここ数年、遺伝子診療に関わる状況は急速に動いていますが、本学会では倫理的・法的・社会的な課題も含め、引き続き遺伝子関連検査・遺伝子診療の急速な進歩発展に貢献すべく尽力してまいります。

 本学会の特徴としましては、アカデミアだけでなく企業会員が多いことが挙げられます。遺伝子関連検査を実際に開発・製造・販売し、或いは受託する企業のご意見を積極的に取り入れ、アカデミアと企業とが共に課題を共有してコンセンサスを作成していく組織体制であることこそが、本学会の強みに他なりません。がん・難病・感染症の遺伝子診療に関わる企業の皆様におかれましては、是非、本学会の趣旨に共鳴いただき、学会活動にご参加・協賛いただけましたらと思います。

 本学会の現在の活動内容は、年1回の学会大会、2010年から開催している「遺伝子診断・検査技術推進フォーラム」、2015年から認定試験が行われている「ジェネティックエキスパート認定制度」とその取得に関わる「臨床遺伝情報検索講習会」、そして年二回の学術誌の発行です。また、12の委員会がそれぞれの専門性を基に学術情報発信などの活動を行っており、これら全ては本学会独自の活動として、遺伝子関連検査の向上や良質な遺伝子診療の推進と発展・普及に幅広く貢献するものです。

 今後の方向性としましては上記の活動を維持しつつ、良質な遺伝子診療を推進するための人材育成を行うと共に、若い人を含めた新たな人材を積極的に登用したいと思います。また、委員会活動への支援を強化し、より円滑な活動を推進したいと思います。そして、遺伝子診断のAI利活用については本学会こそが先頭に立ち牽引していくテーマであると思います。本学会は理事や評議員、委員会委員をはじめ、全メンバーが遺伝子関連検査・遺伝子診療の優秀なエキスパートです。従って学会員自らがワクワクするような主体的な活動をサポート出来れば、自ずと良質な遺伝子診療の推進に繋がります。そうして本学会が更なる発展をきたし、社会に幅広く貢献していけるように力を尽くしたいと思います。

令和7年9月12日 
理事長 仁井見 英樹(富山大学)