理事長メッセージ
 

理事長挨拶

 平成28年12月9日に開催されました日本遺伝子診療学会理事会におきまして,羽田明前理事長の後任として、日本遺伝子診療学会理事長に選出されましたので、会員の皆様に一言ご挨拶申し上げます。

 本学会の目的は,他の遺伝医学に関する学会および臨床検査医学に関する学会で活躍している会員が集い,その接点である「遺伝子関連技術の臨床応用に関する研究の推進と向上をはかること」(会則)です。遺伝医学関連の学会は、当然オーバーラップしつつも、日本人類遺伝学会が学術研究、日本遺伝カウンセリング学会が遺伝医療の臨床を中心とすると考えると、本遺伝子診療学会はその間を繋ぎ、臨床検査医学領域と連携しながら、医療現場での遺伝子診療の推進の基盤となる技術的側面、情報処理的側面、規制科学的側面の問題を解決することが重要と考えます。

 これらを実現していくために、年次大会と並んで重要な本学会の活動として2010年より、「遺伝子診断・検査技術推進フォーラム」を開催しています。臨床検査会社、体外診断薬メーカー、医療機器メーカー、製薬メーカー、規制当局など、アカデミアだけでない様々な立場の関係者が一堂に会して実際的な情報提供、ディスカッションを行うことができる機会として大変好評な企画となっています。今後も、タイムリーな課題について情報収集できる充実した企画を続けたいと考えています。

  次世代シーケンサをはじめとする技術の進歩により、膨大なデータを取り扱う情報技術の専門家が我国では大変不足しています。ゲノム情報だけでなく、トランスクリプトーム,プロテオーム,メタボローム,エピゲノム,さらに疾患の症状を含むフェノームなど全てがオミックス情報を取り扱っていくことが求められています。本学会では、2012年より、「臨床遺伝情報検索講習会」および「ジェネテッックエクスパート認定制度」を設け、関連領域の情報技術専門家の人材養成に取り組んでいます。是非、多くの若手の参加をお願いしたいと存じます。

 我国では、ゲノム研究は進んでも、医療として実施していく基盤整備が大変遅れておりました。政府は、2015年に「ゲノム医療推進協議会」を設置し、「ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース」において具体策が検討されてくるようになりました。本学会の目的である「ゲノム医療実装」と一致したものであり、より多くを発信していく必要が出てきています。特に、ここ2,3年で急速に導入が進んできているがんのクリニカルシーケンスは特に重要で、実装が最も早急に求められている領域であります。本学会は生殖細胞系列の遺伝子変異だけでなく、体細胞遺伝子変異解析とその臨床応用も大変重要な課題としてこれまでも取り組んできましたので、今後、がん診療領域との連携をさらに強めていきたいと考えています。

 私は1994年に遺伝子診療研究会が自治医科大学の河合忠教授と京都大学の森徹教授によって設立された当時から、森徹教授の研究室の一員として継続して本学会に関わってきました。そのご縁で多くの関連領域の方々との交流が生まれ、現在の活動に至っています。本学会の理事長を拝命し、基礎を築かれた先生方へ恩返しをしなければならないという思いが大きいです。医療現場での遺伝子診療・ゲノム医療の推進という大きな目的を果たすために、困難な課題も多いですが、最大限の努力をして参りたいと考えておりますので、会員の皆様方のご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

平成29年6月 理事長 小杉 眞司(京都大学)